知ってほしい、
減農薬栽培について

たくさんの農薬・化学肥料を使った農業が一般的だった1970年頃から
「皮ごと食べても、安心安全なりんごづくり」を目指して、
減農薬栽培に取り組んできました。
年々厳しくなる気象条件と向きあい苦戦しながらも、
「特別栽培農産物基準」を満たしたりんご栽培を行っています。
減農薬栽培で育てたりんごを購入する?

特別栽培って何?

そもそも、その地域で一般的に行われている昔からの農業・生産方式のことを「慣行栽培」と呼んでいます。
「慣行栽培」に対して、使用する農薬・化学肥料を減らして栽培する農法を「特別栽培」と呼び、
農林水産省の定めるガイドラインを満たして栽培を行う必要があります。
そのガイドラインをクリアする基準で栽培された作物が、「特別栽培農産物」と呼ばれます。
使用できる農薬にも制限があり、毎年更新されるため、知らずに規約を破らないよう勉強・情報更新が必須となっています。

特別栽培農産物として認証されるためには

  • 慣行栽培に比べて、農薬の使用カウント数を50%におさえる必要があります。
    長野県北信地域では、ふじなどの晩生種には35剤の使用が基準ですが、
    私たちは17剤以下におさえてりんご栽培を行わなくてはなりません。
    ※慣行栽培での農薬使用基準は、県ごとに制定されているため地域によって異なります。
  • 慣行栽培に比べて、化学肥料の使用量を50%におさえる必要があります(窒素量で換算)。
    作物が成長するために必要な栄養素(窒素・リン・カリウム)を化成肥料でぱぱっと補うか、
    じっくり時間とコストをかけて土を作っていくか、意思決定が重要になります。
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私たちは、自分たちの生活の場所であるりんご畑を守るために減農薬栽培に取り組みはじめ、
結果として、特別栽培農産物基準を満たせるレベルまで成長できました。しかし、
慣行栽培、特別栽培、どちらの栽培方法にも一長一短があり、どちらがいい・正しいと比較できるものではないと考えています。
消費者である皆様が現在の日本農業について知ったうえで、ご自身が選択肢を選んでいただくきっかけを作る一助となると嬉しいです。

日本を支える「慣行栽培」と、
環境に配慮する「特別栽培」

1
日本の食卓を支える、慣行栽培

戦後の目覚ましい日本経済の発展・日本人の食卓を支えてきたのは、慣行栽培です。
見た目がきれいな農作物をどんどん作って売らなくてはならない、そんな時代の流れが
「作物を病害虫から守り、一定以上の品質・規格を守り、収穫量の最大化を目指すこと」を目的とした慣行栽培を築き上げました。
日本の農家の9割以上の農家さんが慣行栽培により農作物を育てていて下さるおかげで、
高品質な農作物が安く豊富に流通し、スーパーマーケットなどで簡単に手に入れることが出来ます。

2
慣行栽培の抱えるリスク
農薬をどんどん使い、化学肥料をばんばん使えば、見た目のきれいな農作物が出来ます。
そして、農作物を作るときの手間やコスト削減が出来、歩留まりもぐんと改善します。
しかし、必ずその反動があります。
化成肥料はドーピングのようなもので、土壌に残りやすく、農作物から人へ残留する危険性、また、
強すぎる農薬は、害虫だけではなく農業に大事な益虫(ミミズやクモなど)や自然界にいる生物も駆除してしまう可能性があります。
3
特別栽培に切り替える?
見た目がきれいでおいしくても、人体に悪影響を与える可能性、また自然界を壊す可能性を懸念すると、
特別栽培の方がいいんじゃないの?と思われる方もいるかもしれません。
しかし、特別栽培が慣行栽培に置き換わらないのは、理由があります。
手間がかかる。農薬・肥料が高くてコストがかかる。作物の見た目が悪くなり歩留まりが落ちる。農作物に病気が発生しやすい。
栽培量が増やしにくく、販売単価が上がり、さらに見た目が悪いものは特に売りにくくなる。
たくさんのネガティブな理由が挙げられるからです。
4
知ってほしい、特別栽培のメリットとデメリット
おいしい、見た目がきれい、安い、手に入りやすい、環境破壊をしない、そして安心して食べられる。
そんなパーフェクトな農作物が特別栽培により出来れば最高ですが、
昨今の世界的異常気象下において、日本の農業の技術力では残念ながらその域までたどり着けないのが現状です。
「減農薬の農作物を買ってみたけど、なんだか見た目が残念。」
「スーパーマーケットで売られているものより、値段が高いのはなぜ?」
手間をかけ、リスクを乗り越えた農作物であり割高になってしまうことを、ご理解いただけると嬉しいです。
メリット
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「特別栽培」と「有機栽培」の違い

「特別栽培」より更に厳しい条件が求められるのが、「有機栽培」です。
一定年数以上、化学系の農薬・化学肥料・土壌改良材を使わずに農産物を栽培することが必須条件です。有機JAS許容農薬や有機肥料は使用可能であるため、農薬使用を禁止された栽培方法ではありません。「有機」「オーガニック」と農作物等に付して販売する場合は、JASマークの掲示が必須となります。
現代のりんご栽培に関しては、まだ有機栽培の域にまで達していないのが現状です。
※JAS(Japan Agricultural Standard)日本農林規格の略称。

減農薬栽培に努めることで、
りんごにはこんな被害が発生します(一例)

すす点・すす斑病
りんごの果皮がすすで黒く汚れる現象です。葉っぱや枝の陰等になっているところに農薬が届かず、自然界にある「すす」で汚れてしまいます。皮をむいた可食部には全く影響がない、商品価値が下がるだけの残念な症状です。当園では「家庭用」または「加工用」として販売させていただいています。
輪紋(りんもん)病・炭疽(たんそ)病
りんごが腐る病気です。伝染するため、腐っている状態が目視で確認できるレベルになってしまったら、農薬では伝染をとめることが出来ず、もう手遅れです。腐ってしまうと食味にも外見にも甚大な影響が出るため、伝染を防ぐよう土中に埋めるなどして廃棄するほかありません。
綿虫(わたむし/めんちゅう)
ふわふわした可愛く聞こえる名前ですが、大変厄介な虫による被害です。アブラムシの類で、幹・枝等どこでも繁殖し、りんごを汚します。この綿虫に汚されたりんごはべたべたして真っ黒になり洗ってもなかなか落ちないため、ジュースなどの加工または廃棄せざるを得なくなります。
小見出し
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\防除、農薬散布はどうやって行うの?/

当園の農薬散布は、りんごの芽がでる3月中旬ごろから収穫2-3週間前ごろまで、約10日~14日間隔で定期的に行われます。スピードスプレイヤー(略してSS)と呼ばれる赤い特殊な農薬散布作業車は、1台約300万円以上。トラックのようなキャビン付きタイプのものだと1,000万円以上します。

環境にやさしい農薬を選んだとしても、薬品は薬品。散布の時は、マスク・眼鏡・合羽を着て、重装備で臨むため、真夏の散布は過酷で体力勝負です。

天気にも大変左右されます。風が強い日に散布すると薬剤が樹にしっかりかからないので、風のないおだやかな早朝4時半~5時ごろから散布しなくてはなりません。また、梅雨時期は日射が短いので薬剤が乾きにくく、散布のタイミングに苦慮します。雨に降られると薬剤が流れて全く効果を得られなかったり、りんごの表面に銅やけと呼ばれる肌荒れを引き起こす可能性があるためです。

傾斜地にあるりんご畑では、雨の後にタイヤが滑りやすく、また、狭い圃場では樹を支える支柱の合間を縫って散布するため事故の危険性が高まります。場合によってはSSが入れず、手動で散布を行わなくてはならないため、さらに労力がかかります。

当園で管理する約2ha強の圃場の防除をするためには、最盛期で約10タンク(10台分)の散布が必要です(使用する農薬により希釈倍率が異なるため、散布量は変動します)。前述の通り風の弱い時間帯を狙っての散布となるため、1日では終わらせることが出来ず、早朝から10時頃まで、2-3日にかけて行わなくてはなりません。農薬費と手間をかける分、しっかり効果を期待したいところです。

2024年 山幸農園防除暦

2024年度の薬剤の履歴を随時公開してまいります。
マシン油乳剤 + 石灰硫黄合剤
1)日農スプレーオイル(マシン油乳剤)
有効成分:マシン油…97.0%
希釈倍率:50倍
適用病害虫:カイガラムシ・ダニ・綿虫

2)石灰硫黄合剤
有効成分:多硫化カルシウム・・・・・27.5%
希釈倍率:10倍
適応病害虫:フラン病

カウント:※マシン油乳剤、石灰硫黄合剤ともにJAS許容農薬のため、カウント除外となります。
散布日:2024年4月1-2日
対象品種:全

2
べフラン液剤25
A
有効成分:イミノクタジン酢酸塩 25.0%
希釈倍率:1000倍適用
病害虫:黒星病・ふらん病

Q
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A
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2024年 山幸農園 施肥記録

2024年度に散布した肥料の記録を随時公開してまいります。
りんごの収穫が終わった後から、来年の収穫に向けての準備が始まります。
たくさんの実をつけた後で、人間でいうと「お腹がすいた状態」です。
おつかれさま、ありがとうの気持ちを込めながら、雪が降る前に肥料を撒きます。
雪融け水が地中にしみこむときに、肥料の栄養素を土壌に吸収させることで、
木の休眠期間に必要な窒素を補い健やかに、春の芽吹きに必要なエネルギーをしっかり補います。
ハーモニーシェル
牡蠣の殻を高温で焼き、つぶしたものです。
微量要素を含んでいるため、植物内酵素を活性化し、作物の保存性を高めます。また、耐病性放線菌の増殖を助け、土壌病原菌の増殖を抑えます。(※製造元ジャパンバイオファームHPより引用)

成分:石灰(CaO)53.56%・窒素0.2%・リン酸0.2%・カリ0.01%・鉄0.2%

散布日:2023年12月14日
対象品種:全
散布量:
2
オーガニック8.5.3 
魚体の水溶性タンパクを馬鈴薯グルテンと米糠に吸着させ、乾燥成型した有機JAS対応の粒状の窒素肥料。(※製造元ジャパンバイオファームHPより引用)

成分:窒素8%・リン酸5%・カリ3%
散布日:2024年2月15日
対象品種:一部圃場
散布量:
Q
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A
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「ネオニコチノイド系」薬剤とは?

「ネオニコチノイド系」、いわゆる「ネオニコ」と呼ばれる薬剤は、特定の7つの化学物質が使用された殺虫剤の総称です。
殺虫剤としてとても効果的な薬剤である反面、必要以上に虫を殺し、繁殖を妨げている可能性があること(例えば受粉を助けてくれるミツバチの大量死や、田んぼに生まれるトンボの激減)。そして人間をはじめとした哺乳類には、脳等に蓄積されることで、発達障害を引き起こす原因となっているのではないか、という研究もなされています。そのためヨーロッパでは、いち早く2000年初頭からネオニコ系薬剤使用規制がとられはじめており、近年日本でも「脱ネオニコ」風潮がだんだんと広まっています。効果がてきめんに表れる薬剤なだけあって、意外と身近な家庭用の殺虫剤などにも使われています。

当園では、いままで17剤のうち1剤「モスピラン」というネオニコ系薬剤を使用していました。りんごの中から食べ散らかすシンクイムシ(外観からは虫害がわかりにくくクレームに直結します)、そして果皮をべったり汚して価値をなくす、綿虫対策のためです。2022年から「モスピラン」を使用しない防除体系での栽培に挑戦してきています。

どれだけの被害がでるかリスクを抱えながらの栽培ですが、安全に考慮した考えを消費者の皆様にメリットデメリットをきちんとお伝えすること心掛けながら、前向きに挑戦していきます。